Aさんの息子は、今春から予備校の寮に入り、受験勉強に励んでいる。寮に入ってから、息子は、Aさんが意外に思うほど連絡をして来ないし、家に帰って来ない。先日、初めて、Aさんが留守中に息子が家に寄ったことを、ご主人から後で聞き、Aさんは、心の中で息子に「家に来るなら、ひと言、私に連絡をくれればいいのに・・・。」と、落胆して語りかけた。のんびりと事後報告をするご主人にも、「息子が来たなら、もっと早く教えてくれればいいのに。私の気持ちがわかっていないのね」と、穏やかになれない。Aさんは、これまでずっと自分からの連絡は控えてきたが、先日の出来事がきっかけで、夏休中に一度くらいなら連絡してもいいのではないか、いや、自分からは息子に連絡しないと決めたのだから、やはりしないほうが・・・と、心が揺れている。そこで、心を整理すべく、タロットを展開することにした。
T・Aさん 40代 東京
A
(1)
現状 |
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①現状には、「13」が正立で出た。最初、Aさんは、この絵柄を、思い切って連絡をとる自分の姿と思いかけたが、冷静に見ているうちに、「違う、私じゃない。これは息子だ」と確信するに至った。息子は、予備校への通学も十分可能なのに、敢えて家を出る選択をした。新たな自分の道を、自分の力で切り拓くために、今、必死に努力しているのだ。Aさんは、母親として、息子のことは十分わかっているつもりであったが、改めて、息子の心意気を見る思いがした。
(2)
経緯 |
現状 |
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②経緯は「星」で、この女性はAさん自身である。ひざまずいて注ぎ続ける姿は、まさにこれまでAさんが家族に愛情を注いできた様子を物語っている。その献身的な愛情が家庭生活を潤し、息子の心身を育んできたのだ。Aさんとしては、注ぎ尽くした感もあるが、そうした環境で育ったからこそ、息子は、自分自身の世界を生きるために、新しい一歩を踏み出したいと思うまでになったのかもしれない。
(3)
③展望の「皇帝」はAさんの夫である。「13」と視線が合っているように、息子と父親は仲が良い。息子は父親を人生の導き手として拠り所にしているようであるし、父親も息子の自立を見守り、自分の出番が来たら、すぐ立ち上がるつもりでいるようだ。Aさんは、ちょっぴり寂しい気もしたが、タロットのメッセージは心に響いた。確かに、これからの息子の成長にとっては、父親との信頼関係をいかに築いていくかが重要なのだろう。
(4)
④星」の注目カードは「斎宮」Rとなった。Aさんは、この人物も自分だとすぐわかった。愛情も一杯注いできたが、息子の教育にも熱心だった。熱心なあまり、息子との距離がうまく取れず、過干渉になったり、管理したりが多かったように思う。その反動で、時には放任状態ということもあったが、息子にすれば、バリバリの教育ママだったに違いない。
(5)
⑤「斎宮」Rの対策カードは「月」。まず、向き合う2匹の動物が目に飛び込んできた。これまでの展開から、Aさんは、これが父親と息子をあらわしていることに納得した。息子の相談相手は父親に任せ、自分は水の中にいるザリガニのように、一歩控えたところで静かに見守るのがいいのだと思った。
アドバイスカードは「宙吊り」で、この人物は、手を後ろにやり、泰然と構えている。タロットのアドバイスはもう明白だ。気もそぞろに自分から息子に連絡を取ることなどしないほうがいいと思った。今は、親離れ、子離れの時期。自分の子離れのあり方が問われているのだ。タロットを展開することで、心が整理できたAさんは、「宙吊り」のように、どっしりとおおらかに見守る親でありたいと思った。きっと息子の真の幸せにつながるだろう。
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