Q. Eさんの父親は88歳になる。壮健な体の持ち主で、同世代の人の中では非常に元気だが、最近になって、膝の老化が進み、大事をとって外出には車椅子を使うようになった。若い時の重労働が原因とあって、本人は納得して多少の不自由を受け入れ、静かな日々を送っている。長男であるEさんの兄は、しょっちゅう父と連絡を取りながら、連休を利用しては父の元へ駆けつけている。他家へ嫁ぎ、遠く離れて住むEさんは、今まで以上に、父には残り少ない晩年を幸せに過ごしてほしいと願っている。できるだけのことをしたいとも思うが、後継ぎとして一番心を砕いている兄の意向を尊重することも大切に違いない。自分の立ち位置はこれでいいだろうか。
S・Eさん 50代 東京
A.(1)
現状 |
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苦しむ人を温かいまなざしで見守る「節制」の天使は、Eさん自身である。父の晩年が幸せなものとなるようできるだけのことをしたいと持っている。翼を持った天使がどこへでも飛んでいくように、Eさんも必要であれば駆けつける覚悟ができている。「節制」は、二つの壺をうまく操るが、一滴もこぼさない慎重さがある。Eさんも慎重である。他の兄弟、特に、一番深く父の世話をしている兄、兄嫁の気持ちを尊重して、節度ある関わり方をしようとしているからである。カードは正立なので、Eさんのこうした姿勢はとても良いことが分かる。
二つの壺からは、心が通い合うEさん親子の関係も見て取れる。壺を行き交うのは、思いやりや愛情、電話、時には思いを託した贈り物であったりする。父は自分の作った野菜を送り、Eさんからは父の健康によさそうなものを送る。頻繁に行うことではないが、この現状を保持していくことである。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯の「悪魔」も、Eさん親子が浮かび上がる。中央に立つ悪魔が父親で、小悪魔はEさんたちである。Eさんの祖父は体が弱く、農業に不向きだったこともあり、父は家長として家族をまとめ、身を粉にして働いてきた。その苦労のおかげで育ってきた子供たちにとって、父親はどんなに年老いても絶対的な存在である。年々、兄の助力を頼ることが多くなっているが、兄は父を中心に据えて手助けしている。Eさんは、兄に倣うようにしている。「悪魔」が正立なので、兄弟で結束して父を中心にまとまることはいいことである。。
(3)
展望は「宙吊り」で、展開は3枚で完了した。手を後ろに引っ込め、悠然とぶら下がりながら、目を大きく見開く「宙吊り」は、Eさんに余分な手出しをせず、心を込めて見守ることを提案しているようである。兄は間もなく終わるサラリーマン生活の後、実家暮らしをどうするか考え始めている。Eさんのベストは、「宙吊り」のような立ち位置にいることである。
アドバイスカードは「太陽」となる。手を取り合って協力する二人は、まさしくEさんと兄である。白い石の上に立ってリードする方が兄であろう。展開のカードから、Eさんは自分の立ち位置を確認できたが、アドバイスカードで、自分のあり方がさらに明確になった。心配なことも提案も、まずは兄への相談から始めよう。
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