最新のケーススタディ 2014年7月10日号 掲載
Q. I氏の家の物置には、祖父母や両親の遺品が一杯ある。物置は老朽していたが、昨年の台風でさらに大きなダメージを受け、穴が開いたような状態になってしまった。もう一度強い台風が来たら、屋根の部分は吹き飛ぶだろう。そうなると、遺品も風雨でぐしゃぐしゃになってしまう。ぎっしり詰まった遺品の中で、比較的スムーズに整理できたのは父親のものだけ。祖父母や母親のものは勝手がわからず、ほとんど手つかずのまま今日まで来てしまった。しかし、今度こそ、台風のシーズンが到来する前に何とかしなければならないと思っている。ぐずぐずしている間に台風が来て、ご先祖のものを台無しにしたら申し訳が立たない。どこからどうやって手をつければいいのか・・・。タロットに助言を求めることにした。 N・Iさん 50代 神奈川
A. (1)
現状 |
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「節制」の天使は、一滴もこぼすまいとして、全神経を使って慎重に二つの壷を操っている。この姿は、先祖の遺品を整理するにあたって、自分の一存で勝手にやらないほうがいい、熟慮してやる必要があると思っているI氏の気持ちをよくあらわしている。傷んできている物置の状況を考えれば、できるだけ早くするのがいいことは十分承知しながら、慌てて先祖を粗末にするような整理をしてはいけないと思うI氏。カードは正立なので、タロットはこうしたI氏の心がけはよいと言っている。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯の「皇帝」Rは、I氏である。I氏には姉が二人いるが、長姉とは七つ、次姉とは三つ離れているので、I氏より先祖のことはよく知っている。昔の話を姉たちから聞かされて、I氏は自分には知らないことがずいぶんあることに気づかされてきた。それもあって、先祖の遺品を前に自分の判断だけで処理できず、ついつい今日まで手を付けるのを先送りしてきた。カードは逆向きなので、理由はどうあれ、先送りを続けてきたことは問題である。実際、大切な遺品が納めてある物置は傷み、I氏は困っているのだから。
(3)
展望は「月」Rで、建物がひっくり返り、水滴もあることから、このまま放置すると、物置は壊れ、降りしきる雨で遺品はびしょ濡れになり、台無しにしてしまうかもしれない。そんなことになったら、遺品の損傷だけでなく、Iさんも他家に嫁いだ姉たちの心も大きなダメージを受けるだろう。自分たちのいい加減さのために先祖の思いを粗末にしたと後悔するだろう。特に、実家に住み、先祖を守るI氏は、放置してきた結果の悲惨な状況に心も痛めるに違いない。
(4)
「皇帝」Rの対策カードは「世界」で、関係者が集まり話し合っている。I氏は二人の姉、とりわけ長姉から、自分の知らない祖父母や両親のことを聞くとよい。実際に物置にある遺品を一つ一つ手に取って、姉たちに相談して扱いを決めていくとよいだろう。そうすれば、受け継ぐべきものが一番ふさわしい人の手に渡り、残すものと処分するものの整理がうまくいく。
(5)
「世界」の注目カードは「教皇」。前の世代のものを次の世代が受け取り、先祖から子孫へ一族の伝統が伝えられていくことを示唆するカードである。I氏はカードを見て、はっとした。大切なのは、遺品の継承というよりは、遺品に籠められた家訓、生き様、想いを受け取ることだと気づいた。ならば、遺品の整理は、先祖から受け継がれてきたものを再認識するまたとない機会でもある。I氏は、物置にあるもの一つ一つに、こうした姿勢で臨むとよいだろう。
(6)
「月」Rの対策カードは「力」が出た。「力」の女性は、I氏の姉をあらわす。先に生まれた姉たちは、当然、I氏より遺品のこともよく知っている。また、母親や祖母から伝え聞いたことも、たくさんあるに違いない。二人の姉の意見を尊重して進めることは、祖父母や両親に思いを寄せることにもつながるので、きっとスムーズな整理を可能にしてくれるだろう。
(7)
「力」の注目カードは「運命の輪」である。一方の生き物がもう一匹の後を追いかけるように一つの輪を回っている様子は、先代から次の世代に大切なものを引き継いで行こうとする姿にも見える。輪の上に鎮座しているのはI家のご先祖様だろうか。残された者たちが先祖からの思いを汲み取り、受け継ぐべきをしっかり受け継いでいく心がけをすれば、ご先祖様もきっと喜んでくださる。遺品の整理は古くなったガラクタの処分ではなく、ものに託された思いを整理する絶好のチャンスである。
アドバイスカードは「節制」、最初に出した現状カードと同じである。I氏は、先祖の遺品整理は、二人の姉たちと意思疎通を図りながらやっていこうと心を決めた。遺品には先祖の思いが染みこんでいる。先祖の思いを粗末にしてはいけない、しっかり向き合おうと肝に銘じた。
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