最新のケーススタディ 2015年2月25日号 掲載
Q. Tさんは、大手Y楽器の音楽教室でエレクトーンの講師をしている。子供たちに教える仕事だが、近年、少子化と子供たちの習い事の多様化もあって、Tさんの仕事の環境は厳しくなっている。しかも、何人かの講師で分担し、教えた分に応じて報酬が決まる仕組みである。このことだけでも、Tさんにとって大きなプレッシャーであったが、最近、さらにTさんを悩ます問題が出て来た。それは、生徒の担当の割り振り方が均等でないことである。多く担当する講師もいれば、あまり担当させてもらえない講師もいて、Tさんは担当が少なくなっている一人なのである。担当講師の割り振りは、生徒の申し込み受付で行われているが、Tさんは、受付での割り振りの偏りに不満を感じている。これまでは何とかやってこられたが、高齢の母との二人暮らしの今後を考えると、経済的に不安でならない。講師の仕事はこれから大丈夫だろうか。
N・Tさん 40代 茨城
A. (1)
現状 |
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現状は「世界」で、中央の人物はTさんである。周囲の人たちが認める中で、誇らしげに中央に立つ姿から、Tさんはエレクトーンの講師としてしっかりした技量を持っていることがわかる。カードは正立なので、現状はTさんが心配するほど問題にはなっていない。しかし、視線は経緯の方に向けられ、過去を気にしている様子である。どうやらTさんが抱える不安は、過去のいきさつから来ているようだ。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯は「月」が出た。靄がかかったようで見通しが暗い絵柄は、Tさんの不安定な心境をよくあらわしている。教室に通う子供の数が少なくなったこともTさんの心に影を落としたが、それ以上に、Tさんを不安に駆り立てたのは、Tさんの担当時間が少なくなっていることである。担当が少なくなっているのは、受付がTさんへの割り振りを少なくしているから。カードでは2匹の犬が向き合って吠えているが、それは、まるでTさんが心の中で、受付の人に「たくさん担当している講師もいるのに、どうして私の担当は少ないの。差をつけないで、もう少し私の担当分を増やしてくれてもいいのではないですか。」と訴えているようである。
(3)
展望は「正義」である。厳しい顔つきで正面を見据える様子から、この先、状況が厳しくなっていくことが見てとれる。現在の生活は何とかなっているが、今のままで行くと、収支バランスを気にしなくてはならなくなる。「正義」も正立なので、赤字で逼迫するようなことにはならないだろうが、展望が今より厳しくなることは受け止めておく必要がある。割り振り担当者への不満を募らせ、不信に陥るより、「どうして自分への割り振りが減らされているのか」、「自分のどこが問題なのか」、に正面から取り組むとよいだろう。
アドバイスカードは「女帝」。このカードを見て、Tさんははっとした。Tさんは真面目で、優秀なエレクトーン講師であるが、口下手なこともあって、社交的な性格ではない。とりわけ、自分の担当生徒を減らす受付の人には、不満や不信感があるので、つっけんどんな応対になってしまう。カードはそれを改めて、「女帝」のように振る舞いなさいと言っているのだ。確かに、「女帝」のような心遣いは不足していたように思う。経営規模が縮んでいるのだから、受付の人たちだって必死なのだ。新しく入学してくれる生徒のことを考えれば、明るくやる気にあふれる講師に任せたいと考えるのは当然である。不満で悶々としている間に、自分の魅力は半減し、受付の信頼も損なっていたに違いない。Tさんは、問題解決のカギは自分にあると反省した。口下手でも、口下手なりの心遣いはできるはず。担当生徒にはもちろん、受付の人や同僚にも、まず自分の方から、心のこもった思いやりを心がけようと思った。
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