Q. 田舎で暮らす高齢の父の体調が、最近思わしくない。Sさんの兄によれば、お正月に、お風呂場でほんの少し腰を打っただけなのに、その時のダメージが長引き、日常生活の行動が以前と同じようにできなくなっているという。都心で働く兄は、仕事と田舎の父のことで手一杯なので、Sさんは、頻繁に兄に状況を聞くことを遠慮している。去年の暮れまでは、父と電話で話すこともあったが、今はそれもできない。年々、日常生活の些細なことが原因で衰えていく父のことを考えると、Sさんは人生の別れの時が近づいているように感じられてならない。「親の背中を見て育つ」という言葉がぴったりの時代に生まれ育ったSさんは、父親との会話は言葉より、以心伝心でやり取りすることが多かったように思う。これまで自分にできることはしてきたつもりであるが、そのままでいいのか、本当はしておいた方がいいことがあるのではないかと思い、タロットを展開することにした。
S・Kさん 50代 東京
A.(1)
現状 |
現状には「斎宮」が出た。Sさんは、「斎宮」の持つ本を見て、ピンと来ることがあった。昨年、Sさんは父親の誕生日にあわせて、父の好物を贈ったが、その時に、ひと言メッセージを添えたのである。「気づいてくれるかな、気づかなくてもいいや」などと思っていたのに、父はしっかり読んでいた。どうやら、そのひと言は父を元気にしてくれたようだ。「斎宮」カードが正立で出たことから、父に手紙を書くことも思案していたSさんは、大いに納得した。人生の大きな節目を前に、今なら父は手紙を読むことはできる。人生を振り返ると、親の価値観に収まらない生き方を貫こうとしたSさんを、父は理解に苦しみながらも、気にかけ見守ってきてくれたことがわかる。今度ばかりは、父への思いを以心伝心で済ませることなく、言葉で表現することが一番いいと、Sさんは思えた。
(2)経緯 | 現状 |
経緯の「宙吊り」Rは、今年に入って起きた出来事をよくあらわしている。お正月に、お風呂場で腰を打った父は、しばらくして急に腰が痛くなり、動けなくなってしまったのである。その二日後に帰省を予定していたSさんは、自宅待機して、善後策のために奔走する兄からの連絡を待つしかなかった。昨年までは、父の健康に安心していたのに、この一件で激変してしまった。Sさんは、衰える肉体の厳しい現実を突きつけられた思いであった。
(3)経緯 | 現状 | 展望 |
展望の「隠者」は、Sさんの父である。「隠者」のように、静かにこれまでの人生を振り返っているようだ。視線の先には「斎宮」(Sさん)がいる。離れていても父はSさんを見守り、Sさんの手紙を喜んでいるかのようだ。「斎宮」と「隠者」は書物(手紙)で親縁しているが、「斎宮」では手に持っている手紙が、「隠者」では、マントの一部のように描かれている。このことから、Sさんは思った。父はその手紙を何度も何度も読み返し、きっと喜びとともにSさんの思いを心に収めてくれると。
(4)経緯 | 現状 | 展望 |
(4) |
「宙吊り」Rの対策カードは「世界」で、タロットは、動けなくなった父のために、あらゆる方面の協力を得て対応するように示唆している。実際、兄の奔走のおかげで、医者、ケアマネジャー、介護関連の担当者など、何人ものアドバイスと助言のおかげで、父は以前のようにはいかないものの、危機的な状況を乗り切ることができた。リースの中央で踊りださんばかりにうれしそうな表情をしているのが父だろうか。肉体の衰えが著しい人生の最晩年は、周囲の支え方が大きいので、父が「人生を全うできて言うことなし。いい人生だった。」と思えるような支え方を心がけるといいことがわかる。
(5)経緯 | 現状 | 展望 | |
(5) | (4) |
「世界」の注目カードは、「恋人」である。Sさんには、3人の人物が、兄夫婦と自分のように見える。この3月に定年を迎える兄は、勤め先の再雇用を利用して、あと2年ほど東京で働いてから、田舎に帰る計画をしていたという。父の状況次第で、兄の計画も見直すことになりそうである。他家に嫁いだSさんにできることは限られているが、長男として父のために頑張る兄や義姉と連絡を密にして、自分の立ち位置で可能な応援をするとよいだろう。また、子供たちの協力し合う姿は、父にとっても喜びとなるものだ。
アドバイスカードは「仕事師」なので、Sさんは、現状を見ながら、臨機応変に対応していくとよいだろう。父親に感謝の手紙を書くことも含めて、フットワーク軽く、気配りしていくとよい。14年前、母が逝ったときは、見送るだけで精いっぱいだったSさん。今度は、やったほうがいいと思うことは、すべて行うつもりでいる。