Q. N氏は、2年前あるきっかけから、認知症で生活保護を受けながら、生まれつき知的障害をもつ義妹と暮らしていたフィリピン未亡人Gさん(71歳)と知り合った。公的な経済援助があっても、この二人だけで日常生活を送るのは難しかった。さらに追い打ちをかけて、亡夫の友人と称する老人とオーヴァステイの長男が寄生し、老女二人の生活は悲惨そのものであった。N氏は捨て置けず、市の生活支援課の協力を得て、散々な苦労の末に、二人を老人介護施設に入居させることに成功した。そんな矢先、フィリピン在住の51歳になる長女が母親を引き取りたいと言ってきた。言葉の問題と国情の違いから、すったもんだがあったが、ここでもN氏が仲を取り持った。5月末に長女は来日、無事母親を連れて帰国した。これで落着するだろうか、自分の関わりはよかったか。自分にどんな意味があったか。心を整理するために、タロットを展開した。
I・Nさん 80代 神奈川
A.(1)
現状 |
現状は「神の家」が出た。老女二人がやっと安心して暮らせるようになった老人介護施設である。ここでは、個室があてがわれ、3度の食事、入浴、24時間介護が受けられる。この建物に天から飛び込んでくる雷のようなもの、これは認知症の母親Gさんを引き取りたいと言ってきた長女の決断であるに違いない。カードには、施設から出ようとしているGさん、施設の前まで迎えに来た長女が描かれている。カードは正立なので、この決断は両者にとって良かったことがわかる。仲を取り持って最大限の援助をし続けたN氏の功績も大きい。
(2)経緯 | 現状 |
経緯は「恋人」Rで、これまでの老女二人をめぐる問題が、解決が容易でなかったことが示されている。亡夫の友人と称する老人、オ―ヴァステイの長男、その妻を自称するフィリピン女性など、複雑に入り組んだ人間関係と各人の思惑で、こじれにこじれていた。
(3)経緯 | 現状 | 展望 |
展望の「世界」カードからは、すべてが円満に解決する状況が窺われる。中央で安住の地を得たかのように微笑んでいるのがGさんに違いない。慣れ親しんだ環境に戻り、娘や孫、知人に囲まれ、安らかな晩年を過ごす様子が目に浮かぶようだ。
(4)経緯 | 現状 | 展望 |
(4) |
「恋人」Rの対策カード「13」は、N氏である。相談に乗ってもらっていた市の生活支援課の助言を受け、老女二人の後見人的立場を認められたこともあり、義侠心の強いN氏は、山積する問題解決を決意し、行動を開始した。ご自身も高齢で、実際にあちこちに足を運ぶのは大変だったに違いないが、N氏の決意が問題解決の鍵になったことはカードが示している。
(5)
経緯 | 現状 | 展望 |
(4) | (5) |
「13」の注目カードは「仕事師」で、N氏にはあちこち赴いて談判を重ねた自分に見えた。行った先は、市役所担当職員、銀行窓口、ケアマネ、ヘルパー、年金機構、警察署など、実に多岐にわたった。Gさんに関わらなかったら行くはずもないところへも出向いて、後見人としての役割を果たそうとしたのである。無我夢中でよかれと思ってやっとことであるが、N氏のとった行動は適切だったと言える。
アドバイスカードは、展望と同じ「世界」である。この度のN氏の献身的な働きのおかげで、Gさんにとっても、関係者の人にとっても、最良の解決ができたといってよいだろう。N氏は、自分のこれまでの世界観を変えるような事件に遭遇して、人間としての幸せのあり方を考えさせる貴重な機会をもらったと思っている。 前回のケーススタディ