Q
Aさんの息子は、予備校の寮に入って、受験勉強をしてきた。母親であるAさんと折り合いが悪かったため、都心に住みながら予備校で寮生活をしてきたのである。Aさんの息子には、どうしても入りたい大学があり、強い思い入れを持って受験に臨んだのだが、今春はうまくいかなかった。再度挑戦するにあたって、寮生活を止め、自宅へ戻りたいと言い出した。Aさんの心は複雑である。受験後、息子が10日ほど家に滞在した時には、お互いに和やかで、息子の成長を感じる場面も多々あった。しかし、ずっと一緒に過ごすとなると、Aさんには、以前のいさかいの日々が思い出され、またその頃に戻ってしまうのではと、恐れる気持ちも強い。やはり、息子は外に出して距離をとったほうがうまくいくのではとも思う。今後のことは、家族3人(息子、父親、母親であるTさん)で話し合うことになっているが、Aさんはその前に、この問題に対する心構えを、タロットに聞いてみることにした。
T・Aさん 40代 東京
A
(1)現状
現状 |
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①現状は「戦車」が逆向きで出た。Aさんには、すぐわかった。まさに、思う方向に進むことができていない息子の姿である。「入るなら絶対にこの大学!それ以外はない!」と言い切って合格を目指したが、今年の受験もうまくいかなかった。受験に失敗したのに、失意に沈んで進路を見直すどころか、何が何でも行くんだ!と、鼻息が荒い。志があるのは頼もしいが、Aさんには、息子が決めた道へのこだわりが強すぎて、空回りしているように見える。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯も「運命の輪」が逆向きであった。Aさんは、家族3人の関係があらわれているように感じた。Aさんの夫は仕事が忙しく、家にいる時間が少ないこともあって、家庭内のことはAさん任せである。スフィンクスのような立ち位置にいる。夫に比べ、Aさんは息子と、ずっと近しい関係にあるが、いつも接点が見いだせない会話を繰り返すだけで、いさかいが絶えない日々を過ごしてきた。現状と、「輪」で親縁していることから、我が家は、家族関係も会話も空回りして、噛み合っていない。実際その通りだと、Aさんは反省した。
(3)展望
③展望も「節制」の逆向き。Aさんは、息子と気持ちを通わせたいと願うのに、うまくできない自分を見た。母親であるAさんは、どうしても、つい息子のことが気になる。目の前にいると、なおさらだ。しかし、カードが逆向きであることから、2つの壺だけを行き交う水のように、関心を息子に向けすぎ、自分の注ぐ思い(自分の期待)に応えてくれることを求めすぎているのかもしれないことに気づいた。つい過剰になってしまうので、Aさんからすれば、息子への愛情から言うことが、息子にとっては小言に聞こえてしまうのだろう。
(4)
④「戦車」Rの対策カードは「斎宮」で、Aさんは、自分のとるべき姿であると思った。息子には、冷静に接することが大切だ。息子と離れていた一年、Aさんは、Aさんなりに自分を見つめたり、内面を充実させる勉強をしたりして、自分の視野を広げてきた。今が、この学びを活かす時なのだ。
(5)
⑤「斎宮」の注目カード兼「運命の輪」Rの対策カードは、「女帝」である。Aさんは、自信に溢れる女帝から、「あなたは、家庭の要なのだから、もっとゆったり、どっしり構えていなさい。要にいる人が目の前の小さなことにばかり気を取られていると、家の中がギスギスしてくるわよ。私のように未来は明るいと思って、おおらかにいればうまくいくわよ」と言われたように感じた。Aさんは、女帝から力をもらい、自分でもうまくやって行けそうに思った。
(6)
⑥「節制」Rの注目カードは「太陽」で、レンガの中の二人が自分と息子であることは、一目瞭然であった。家に戻ろうとする息子を受け入れるのがよいと思った。Aさんは、迎え入れる右側の人物のように、立場の違いを保ちつつ、息子を励ましていくように心がけていこうと思った。
(7)
⑦「節制」Rの対策カード「世界」からは、自分の関心を息子だけに集中させず、さまざまなことに目を向け、それぞれをもっと楽しもうと思った。楽しむことで視野も広がる。息子への接し方にも余裕が生まれ、好影響を及ぼすに違いない。
アドバイスカードは「隠者」。息子の問題を通して、Aさんは、母親としての成熟が求められていると痛感した。あれこれ手を出すのではなく、息子を温かく見守りながら、必要な時に、必要なところを照らせる智慧と冷静さを磨いていくことが、解決の鍵になると思った。難しい修行ではあるが、やってみようと決意した。
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