Q
Kさんは、数年前に、年金生活に入った。当初は、長年、働き続けてきた生活からの解放感もあり、「しばらくのんびりし、これからは楽しく生活して行こう!」と前向きな気持ちでいた。しかし、一気に増えた自由時間の使い方がうまくいかず、漫然と日を過ごすことも多くなった。特に、コロナ禍が叫ばれるようになってからは、外出も一段と減り、体も心も鈍ってきている。うっかりミスも多くなったように感じている。最近も、外出先で置き忘れたと思っていた携帯電話が、何か月も経って、普段よく使う自宅の引き出しから出てきた。Kさんは、本当にびっくりした。携帯を失くしたと思ったその時も、引き出しの中は点検していたからである。でも、見つけられず、ないと思っていた。その時は、気持ちが動転していたので、目一杯詰め込んだものに紛れ込んだ携帯が目に入らなかったのだ。自宅の鍵を玄関の扉に挿したまま忘れてしまったこともある。Kさんは、年齢と共に記憶力が衰えるのは仕方がないと思いつつ、独り暮らしなので、このままではいけないと危機感を深めている。この事態を改善すべく、タロットからの助言を得ることにした。
T・Kさん 60代 東京
A
(1)現状
現状 |
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①現状には「月」が出た。正立ではあるが、Kさんは、2匹の動物が吠え合うさまやカード全体の色彩的な暗さから、今の自分のモヤモヤした気持ちをよくあらわしていると思った。Kさんは、自分が携帯を失くしたのは、置引きに遭ったからだと思い込んでいた。ところが、いつもよく使う引き出しから、何か月も経って、突如出てきた。狐につままれたようで、不可解だったが、自分がとんでもない思い込みをしてきたことに気づき、愕然とした。そして、うっかりミスが多くなった我が身を考えているうちに、鬱々としてきたのである。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯は「運命の輪」Rだった。一方の動物がもう一方の動物を必死に追いかけているが、くるくる回る車輪の中では、追いつけそうにない。Kさんは、この様子は、携帯を失くして、心当たりをさんざん探し回り、交番に届け出もしたのに見つからなかった時のことをよくあらわしていると思った。
(3)展望
③展望は「正義」。大きな剣と正義の女神の表情を見て、Kさんは今後も厳しい状況が続くと思った。年齢を重ねて行くのだから、仕方がないと思った。ただ、厳しくてもカードは正立。自分の心がけ次第で、何とか凌いで行けそうだ。そのためにも、もう少し自分の現実を直視しなければならないと反省した。
(4)
④「運命の輪」Rの対策カードは「隠者」で、Kさんは、年老いた隠者が手に掲げる灯りに注目した。小さな灯りなので、全体を照らすというよりは、必要なところを照らそうとしているように見える。「体が徐々に弱り、記憶力や認知力も衰えていくのだから、あれこれやろうとせず、必要なことだけ意識してやるようにした方がいい」と、言われているように思った。老賢人の言うことなので、説得力があった。
(5)
⑤「隠者」の注目カードは「力」が出た。少女の帽子のレムニスケートの縁取りに目に留めたKさんは、レム二スケートのように、どんなものでも使ったら必ず元に戻すようにすれば紛失しなくなると気づき、はっとした。「力」「隠者」の2枚を見ているうちに、隠者の足元にある書物も浮かび上がって見え、メモする習慣も手助けになると思った。
アドバイスカードは「節制」である。壺のやり取りから、頭の中にある記憶(一方の壺)をメモすることで紙面に写す(もう一方の壺に移す)、出したら必ず元の場所に戻すことを習慣化できるようにしていこうと、Kさんは心に誓った。これなら自分にもできそうだ。徐々に探し物で困ることも少なくなり、部屋も整然としてくるかもしれない。独り暮らしでも大丈夫!と言える自分になりたいと思った。
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