Q
I氏の会社では、3月から4月にかけて人員削減が行われ、残った社員の仕事量は一気に増えた。I氏も、それ以前の仕事に加え、新しい分野の仕事も受け持つことになり、毎日くたくたである。特に、新しい分野は経験がなく、しかも一人で担わなくてはならないので、体力だけでなく心理的にもきつい。その上、「何故、自分がこの仕事を?」という気持ちが消えず、気力が萎え、イライラを押さえられなくなっている。何とか改善したいと思い、タロットを展開することにした。
M・I氏 40代 埼玉
A
(1)現状
現状 |
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①現状には「節制」が逆向きで出た。I氏には、二つの壺を見ることもせず、水を移し替える姿が、与えられた仕事をただこなしているだけの今の自分に見えた。突如、加えられた仕事に不本意な思いを引きずっているので、一生懸命仕事に打ち込もうとか、期待に応えて頑張ろうといった気持ちを持てないでいる。自分は、この後ろ向きな心に振り回されているのだと思うと、本当に未熟だなと思う。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯も「斎宮」の逆向き。I氏は、この絵柄にも自分がよくあらわれていると思った。新しく任された仕事は一人で進めることが多く、しかも慣れないので、周りの人たちと心情的な距離を感じるようになった。孤立感が増して、いつの間にか自分だけが苦労しているように思ってしまうのだ。カードは逆向きで、妄想だとわかるが、抜け出せていない。
(3)展望
③展望は「月」である。向かい合う二匹の犬を見たI氏は、自分と社長(女社長)だと直感した。従来の仕事と新たな仕事で四苦八苦する自分は肌色の犬だ。心も体も疲れ果てているので、未経験の仕事をI氏に割り振った社長へも、少なからず不満があった。しかし、空色の犬と向き合っているのを見ているうちに、社長の思いに触れた気がした。ここ数年、会社は何度か人員削減をしてきたが、I氏は、会社に必要な社員として処遇されてきた。今回もそうだ。I氏は、カードを見て、はっとした。社長は、自分を冷遇しているのではなく、陰ながら気遣い見守っているのだ。そう思うと、一社員の立場では想像もつかない苦境にある社長の気持ちが、少し理解できる気がした。社長の思いを受け止めて仕事に向き合うなら、ずっと気持ちも楽になりそうだ。
(4)
④「節制」Rの対策カードは「女帝」。社長だ。社内で勤続年数が長くなったI氏は、これまで、ずいぶん目をかけてもらってきた。仕事を超えて恩を受けてきた自分が、経営困難に瀕しているこの時期に、不満でイライラしているのは恥ずかしいことに思えてくる。重圧の中で会社の舵取りをする社長の気持ちを理解して、仕事に取り組むべきだと思った。
(5)
⑤「女帝」の注目カードは「審判」である。I氏には、この二枚が、社長が会社の再起をかけて、この経営困難から何とか脱出しようとしている姿に見えた。そのためには、社員も同じ思いを持って立ち上がる必要がある。I氏は、その一人として、いつまでも小さな自分の不満の中で鬱々していてはいけないと思った。こんな時こそ、大きな視点が必要なのだと思った。
(6)
⑥「斎宮」Rの対策カード「世界」には、多くの存在が描かれ、「斎宮」Rと対照的である。自分が一人で担当する仕事があったとしても、会社は社員全員がそれぞれの役割を果たし、皆で協力して作り上げるもの。どこかが欠落していたり不備だったりすると、会社全体に影響を与えてしまう。そう考えると、自分が新たに任された部署も、地味なようだが、会社にとっては大切な部署だ。自分だけでなく、他の社員の仕事量も増えた。I氏は、頑張っているのは自分だけではないことに、もっと気持ちを振り向けなければと思った。
(7)
⑦「世界」の注目カードは「仕事師」が出た。I氏は、日々の仕事をする上で、どんな気持ちで、何を意識して取り組むかは、やはり重要なことだと反省した。当たり前のことだが、ただ漫然とこなすだけだったり、心に不満を抱きながらでは、ますます疲れるだけだ。
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経緯 |
現状 |
展望 |
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⑧「仕事師」の注目カードは「力」。I氏は、この少女が当事者意識を持って、どんなことにも取り組んでいけるのは、蜂に象徴される大切なことから目を逸らさないからだと思った。自分も、今回も自分を会社に残してくれた社長に感謝し、遅ればせながら自分への期待に応えるようにするなら、道は開けてくると思った。
アドバイスカードは「宙吊り」である。与えられた仕事を、一社員としての立場からではなく、コロナ禍の大変な状況下で会社を率いる社長の立場から見つめ直し、取り組んでいこうと決意した。
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