Q
Tさんは、20年アナウンス業を仕事にしてきた。50代になり、今のところ仕事の現状維持はできているが、いつまで維持できるかとなると自分でも見通せない。しかし、自分の年齢や業界の状況を考えれば、仕事の依頼は増えることはないだろうと想像できる。それなら、第2の人生のスタートとして、話す当事者から、話し方を教える側の仕事をしていくのはどうかと思い至った。果たして自分にできるのか、タロットに問いかけてみることにした。
E・Tさん 50代 東京
A
(1)現状
現状 |
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①現状には「月」が正立で出た。2匹の向き合う犬を見てTさんが思い出したのは、かつての自分、何をするも下手過ぎて、上司や先輩に怒られてばかりいた自分の姿である。アナウンス業を志す人の多くは、入社前から必要な訓練を重ねたり見聞を広めたりしているものだが、Tさんは、何の準備もないまま、入社試験に合格してしまったために、他の人より、最初から相当出遅れていた。Tさんは、毎日、上司や先輩から「下手ね! 全然なっていない! あなたの代わりはいくらでもいるわよ!」と怒られ、泣いていたのである。自分の好きなことを仕事にできてよかったとは思うが、こんな自分が人に教えられるのか、とても確信が持てない。暗いムードが漂う月カードは、Tさんの心をよくあらわしている。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯は「女帝」である。Tさんは、カードを見て思い当たることがあった。実は、以前にも、人に教えることを考えたことがあったのだ。でも、その時は、高齢ながら家業に携わっていた母親のことや家業の今後をどうするかなど、優先的に取り組まなければならず、自分の仕事は計画だけで終わってしまったが、今は、それでよかったと思う。その時、娘としてできるだけのことをしたので、実家の問題も母親のことも落ち着いた。そのおかげで、やっと自分の今後を考えられる状況が整って来たからである。
(3)展望
③展望は「悪魔」Rとなった。Tさんは、真ん中の悪魔が自分で、小悪魔が生徒さんをあらわしているように思った。かつて職場で出来が悪く叱られ続けてきた自分を引きずっているだけに、そんな自分に教える仕事が務まるのか、生徒さんはついてきてくれるのか、自信が持てず、おろおろする自分の姿を示唆しているようだ。また、ひょっとしたら、今は落ち着いている母親や実家の問題が再燃し、身動きが取れなくなることを暗示しているのかもしれない。いずれにしても、悲観的な気持ちのまま取り組めば、否定的な妄想にからめとられてしまうことを痛感した。これではいけない。
(4)
④「悪魔」Rの対策カードは「力」。Tさんは、カードの少女のように、自分の心を滅入らせる否定的な思いをコントロールしなければならないと思った。確かに昔は、下手と言われ続け、叱られない日はなかった。それでも20年続けることができたのだ。その間、人の何倍も努力もした。少女を見つめる蜂に、もっと頑張ってきた自分に自信を持ちなさいと言われているような気がしてきた。
(5)
⑤「力」の対策カード「隠者」は、アナウンスの勉強を一緒にしている友人のことだと、Tさんにはすぐわかった。その友人はプロ意識が高く、いつもTさんを叱咤激励してきた。Tさんは、自分が仕事を続けてこられたのは、ひとえに彼女のおかげだと思っている。以前、彼女から、「アナウンスを教えることはしないの?」と問われたことがあるが、その時は「えっ?私にできるのかしら?無理でしょう。」としか思えなかった。しかし、改めて「力」と「隠者」の2枚を見ると、Tさんが教えることに覚悟を持って取り組んでいくなら、自分のずっと先を行く友人が、きっと必要な助言をくれるに違いないと思えた。
アドバイスカードは「節制」。振り返れば、アナウンスが下手過ぎて叱られることが多かった自分。でも、そのことがあったから、仕事に対し精一杯努力するようになり、今の自分に繫がっている気がする。学生時代運動部でもなかったのに、途中で投げ出さず、よく頑張れたものだ。Tさんは、落ちこぼれの自分だからこそ伝えていけることがあるのではないかと思えて来た。現状の「月」カードの犬も対策カードの「力」のライオンも口を開けているので、話す仕事には関わっていけそうだ。仕事になるかはわからないが、誰かの為になるだけでも良いのでは。今なら実現に向けて踏み出せると思った。タロットを展開したことで、踏ん切りがついた。
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