Q
Fさんは、同業の先輩に誘われて、工芸品店を一緒に営んできた。もう始めて20年以上になる。最初は、販売だけだったが、途中から店舗の一角で、初心者向けの教室も始め、創作活動の楽しさも経験できた。こんな素晴らしい仕事人生を送ることができたのは、何よりも、やり手の先輩に取り立ててもらったおかげであると、Fさんは先輩に感謝してきた。ところが、先輩が体調を崩してから、状況は一変した。以前のように、先輩が中心になって、Fさんはサポート役で運営することが難しくなってしまったのである。先輩は「あとをよろしく、大丈夫、うまくやっていけるよ」と言ってくれるが、Fさんは、「サポート役ばかりしてきた自分に、果たして先輩のあとが務まるだろうか? 責任の中心にいる者とサポート役では、プレッシャーが全然違う!」と、疑念と不安で一杯である。自分に継承する力があると思えないFさんは、この先どうすればよいか、心が定まらない。はたして自分に現状維持できるのか、縮小すべきか、あるいは区切りをつけたほうがいいのか、今後の舵取りを、タロットに相談することにした。
S・Fさん 50代 東京
A
(1)現状
現状 |
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①現状には「正義」が出た。緊張した面持ちで、現状を直視する人物は、まさに今のFさんである。心の中で、次々に浮かび上がる不安や懸念事項と自分の能力や体力・気力を秤にかけ、自問自答しながら、今後を決めようとしている。厳しさが漂う絵柄で、Fさんも苦しいが、カードは正立である。Fさんは、今、自分がこの問題をあいまいにせず、しっかり向き合おうとするのはよいことなのだと思うことできた。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯は「神の家」Rである。二人で積み上げて来たものが、先輩の体調不良がきっかけで、ひっくり返ってしまった様子をよくあらわしている。先輩は予期せぬ事態に、意気阻喪したに違いないが、Fさんにとっても衝撃で、ショックが癒えていない。それに、Fさんは、サポート役しかしてこなかったので、「自分が頑張るから、大丈夫です!」など、先輩を安心させるひと言がどうしても言い出せなかったのである。
(3)展望
③展望は「宙吊り」で、Fさんは、じっと動かないこの人物から、「不動であれ!」と言われたように感じた。現状維持は、自分の力ではとても無理だと、消極的に考えていたFさんには、とても意外だった。でもそれ以上に、カードのメッセージの方が一層強く響いた。不動心を持てば、こんな自分でも何とかなるのかもしれないと、勇気づけられる思いがした。
(4)
④「神の家」Rの対策カードは「運命の輪」。カードを見たFさんは、回転する輪を見て、立ち止まらずにやり続けることが、自分がすべきことなのだと気づいた。どれくらいのことができるかはわからないが、何もしないうちから、自分には力がないから絶対に無理だと決めつけてはいけないと思った。先輩から、同じレベルの引き継ぎを求められているわけでもないのだから、まずは、自分にできることをしていけばいいのだ。輪の回転を止めなければ、そのうちに、弾みもついてきそうだ。
アドバイスカードは「節制」。二つの壺の水を慎重に移し替え続ける天使の姿を見て、Fさんはカードの展開と同じ方向性を後押ししていると痛感した。ともかく自分にできることを見極めながら、これまでと同じように、先輩と一緒に作り上げて来た路線を継承する努力をしてみる気になった。Fさんは、天使の目の色が通常でないことに気づいて、迷う時ほど、目先のことに囚われて動揺するのではなく、この天使のようにクールな目を持つことの大切さを思った。
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