Q
Aさんは、昨年弓道教室に通い始めてから面白さに目覚め、その後も引き続き連盟の会員となって、道場に通っている。Aさんは初心者なので、弓道教室の同期生たちと話し合い、一緒の時間帯に稽古し、弓道教室で指導を受けた大御所の先生の指導を受けるようにしてきた。ところが、たまたま違う時間帯に道場に行ったときに指導してくださったのは、女性の先生だった。先生の指導は手取り足取り具体的で、説明もわかりやすく、Aさんは母親のような親しみを覚えた。その後も、大御所の先生が怪我や病気で休まれると、女の先生から指導を受けてきたが、今は大御所の先生は復帰されたので、結果的に、Aさんは二人の先生から指導を受けている。指導の受け方としてこれでよいのか、Aさんはタロットを展開して、自分の心を整理することにした。
M・Aさん 50代 山梨
A
(1)現状
現状 |
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①現状には、「太陽」Rが出た。Aさんは、カードを見て、今の自分の心がよくあらわれていると思った。大御所の先生(右側の白い石の人物)は、いつも弓道の高潔な精神を中核においた指導をされ、女の先生(左側の尻尾のある人物)は弓道の具体的な体の使い方や動かし方を指導してくださる。初心者のAさんにとって、お二人ともありがたい存在であるが、弓道は「道」であるため、二人の指導者から指導を受けてよいものだろうかと迷い、心が晴れないのである。
(2)経緯
経緯 |
現状 |
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②経緯は「節制」Rで、Aさんは二つの壺に注目した。Aさんには、節制の人物(Aさん自身)が、必死に壺の水をひとつにしなければいけないと思って格闘しているように見えた。Aさんは、性格的に「〇〇をするなら、こうあるべきでは?」と考えるタイプなので、迷ったり引っ掛かったりすることがあると、考えすぎ煮詰まってしまうことがある。こんな部分が影響しているのかもしれないと思った。
(3)展望
③展望は「審判」R。Aさんは、3人の人物に注目して、空色の人物が自分、左側の女性が女の先生、右側の男性が大御所の先生であると思った。女の先生はAさんを見て「頑張れ!」と応援してくれているように見えるが、大御所の先生の視線は、Aさんではなく天使に向けられている。大御所の先生は弓道の高潔な精神を体現した素晴らしい指導者であるが、高齢で先月から怪我や病気で体調が不安定でいらっしゃる。元気な時は自ら稽古し、指導もしてくださるが、この先入院の予定もあると聞いている。ご自分の体調問題で、道場の一人一人への個人的な指導は思うに任せないことを残念に思って、天を仰いでいらっしゃるのかもしれない。ひょっとしたら、今後の道場の在り方を考えていらっしゃるのかもしれない。
(4)
④「太陽」Rの対策カードは「戦車」である。Aさんは、馬車に乗って邁進する人物に、「考え込んでいないで、稽古に専念しなさい。今のあなたに必要なのは、一生懸命稽古すること、弓道は精神と所作の両方をしっかり身につけないと上達しませんよ。」と叱咤激励されたように感じた。そうだと思った。Aさんは力強い応援メッセージを受けて、それまでの鬱々とした迷いが吹き飛んだ。
(5)
⑤「戦車」の注目カード兼「節制」Rの対策カードは「恋人」である。「節制」Rでは、壺の水をひとつにしなければと格闘していたが、「恋人」には3人の人物が描かれている。3人は、Aさんと二人の先生である。大御所の先生は高齢で体調問題もおありなので、きっと道場の指導を女の先生や他の先生に任せることが多くなっていくのだろう。Aさんは、大御所の先生が来てくださる間は、二人の先生から指導を受けることに納得できた。頭上の天使は弓矢を持っている。「弓道はあなたにぴったりだから精進しなさい!」と言われているようで、Aさんは嬉しかった。
(6)
⑥「審判」Rの対策カードに出たのは「斎宮」で、広々とした空間に複数の人物がいる「審判」Rと対照的な絵柄だ。Aさんは、はっとした。そもそも弓道に関心を持ったきっかけは、武道や体の鍛錬というより、弓道の持つ精神的な世界に魅かれたことだった。自分の心を振り返ってみると、当時のことが蘇ってくる。Aさんは、カードを見ながら、自分の原点を大切にすることをかみしめた。
アドバイスカードは「隠者」。心の学びをしてきたAさんにとって、弓道は、教わってきた心の学びを体で実践している感覚がある。道場で先生方の指導を受けながら、弓道を通して自分の心の学びの深化となるよう精進していきたいと思った。
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