Q. Sさんの会社は、精神世界の書籍や雑誌の発行を英語圏を中心に展開し、啓蒙活動を行っているアメリカのK社と契約を結び、2011年から一緒に仕事をしてきた。K社にとって日本の会社と提携するのは初めてであったが、この企画はまずまずの成功を収めたので、2013年になって、2つ目の企画を行うことになった。発案当初はよかったが、契約交渉の担当者が代わってから、急にぎくしゃくし始めた。何とかしなければ・・・と思っていた矢先、突然、K社側から、リストラのため契約を白紙に戻したいとの連絡が入る。Sさんはショックを受けたが、この度の契約交渉では、新しい担当者から、2年前の友好的な交渉の時からは想像できないほど、厳しい契約条件が出され驚いていたので、ほっとする自分もいた。K社との企画はいったん白紙になった。今後の舵取りはどうしたらいいだろう。
T・Sさん 50代 東京
A.(1)
現状 |
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「愚者」は振出しに戻り、自由になったSさんである。Sさんは、この度の契約交渉で、K社の新しい担当者から提示される制約や厳しい条件に、非常に窮屈な思いがしていた。以前とは全く違う強気の交渉に、Sさん側は戸惑い、いささか担当者の強引さに辟易としていた。ここまで来たら契約をなんとかまとめたいと思う気持ちと、契約の段階でこんな状態でうまくいくだろうかと不安になる気持ちが交錯していたときに、K社から中止の連絡。驚いたが、同時に、Sさんの心にのしかかっていた漠然とした不安は消えた。それくらい、この度の交渉は煮詰まっていたのである。いったん白紙になったことで、Sさんは何かに気兼ねすることなく、のびのびと将来のことを考えられる状態になった。現状カード「愚者」からは、今、Sさんは初心に立ち返り、新たな一歩を踏み出す時にいることがわかる。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯の「女帝」Rは、正立なら未来を見つめているはずであるが、逆向きなので、過去を振り返っているように見える。「女帝」Rは、契約交渉の先頭に立ったSさんの心情がよくあらわれている。K社の新しい担当者が出してきた制約の多い契約条件にびっくりし、「本当にこれがK社の意向なのだろうか。1回目の契約時はスムーズで、紳士的な対応だった。担当者が代わると、こうも変質するものだろうか。」とSさんはいぶかしがる。法人レベルの交渉なので、私情を混ぜることはないが、Sさんの気持ちは乗らない。そんなときに、K社から2回目の企画中止の連絡がもたらされた。カードの逆向きが暗示するように、この度の企画はスムーズにいかない問題を抱えていたようだ。
(3)
展望は、活発に仕事を進めていく「仕事師」である。「仕事師」は「愚者」を見ているので、今後、Sさんたちは、自分たちの理念、自分たちの目指す目標に向かって、主体的なスタンスを取って仕事をしていくとよいだろう。自らが発信元になり、自分たちの創意工夫から生み出されたものを活かすことだ。「仕事師」は正立なので、きっとうまくいくだろう。
(4)
経緯の「女帝」Rの注目カードは「神の家」である。レンガがしっかり積み上がってできた「神の家」は、まさにK社がこれまで行ってきた功績そのものである。長く、水準の高い精神世界の書籍や雑誌を出し続けることは、並大抵の努力でできることではないが、K社はそれをやり続け、社会にも貢献してきた。Sさん(「女帝」R)はそのことをよく知っていたから、その理念に共感し、一緒に仕事をしてきた。そして、それを知っていたからこそ、2回目の交渉内容に驚いたのだ。
(5)
「女帝」Rの対策カードは「恋人」で、契約中止後の話し合いが大切であると示唆する。関係者全員が気持ちよく一区切りつけられるようなクロージングをしなければならない。リストラをしなければならなくなったK社の事情を知れば、K社も大変な状況にあったことが分かる。契約条件が厳しくなったことも、社内事情と関係あるのかもしれない。そうした事情を慮った対応をするとよいだろう。契約交渉を取り仕切ってきてくれたエージェントを介して、これまで一緒に仕事できたことへの謝意を伝えるのも、よいクロージングになる。
アドバイスカードは、リーダーシップと実践力の「皇帝」である。Sさんは、自分の会社が使命とすることを、自信をもって打ち出していい。思い切ってやって吉と出るに違いない。自分たちが切り拓いていくんだという気慨を持ってやっていく時である。
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