Q.I君は婦人服の会社にデザイナーとして勤めている。でも、デザインの決定権は上司にあるので、いつも上司の好みに合ったデザインをすれば採用されるが、好みに合わないと却下されてしまうという。日本を代表するデザイナーである森英恵のような美意識に憧れ、いつかパリへ!と夢が大きい分、会社の方針についフラストレーションを感じてしまう。何とか自分のセンスを発揮した仕事をしたいと願うI君。どうしたらいいだろうか。(H・I君、埼玉、30代)
A.
(1)
現状 |
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「運命の輪」が逆向きで出た。この輪に乗る動物は視線を合わせることがないことから、 I君と上司はデザインのセンスがかみ合っていないことが分かる。この逆向きのカードから、I君は自分にも非があることに気づく。I君は自分のセンスへのこだわりが強く、自分の力を過信するあまり、周囲につい批判的なことを言ってしまったり、自分を認めないのは相手に問題があるからだと思ってしまう傾向がある。でも、上司が採用してくれないのは、上司の無理解ばかりではなさそうだ。「時代の需要に応えているだろうか?」「自己主張のデザインになっていないだろうか?」と考えたとき、やはり自分の中に問題がある。
(2)
経緯 |
現状 |
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I君の仕事は、婦人服のデザイナーである。経緯には、まさにぴったりのカードが出た。正立で出ているので、I君はこの仕事に向いており、また十分な才能もあることがわかる。自分なりのアイデアもあり、採用されることを待ち望んでいる。でも、現状の「運命の輪」Rとあわせて見ると、タイミングが合っていない。流行は時代とともに変わって行くので、今の時代が求めるものとI君が描くものがかみ合っていないのかもしれない。
(3)
展望は「太陽」R。自分のデザインが採用されない状況が続くことで、I君の心は晴れない。やりたいことと現実の統合がとれない憂鬱な日々が示唆される。
(4)
現状の対策カードは「宙吊り」である。「宙吊り」は逆さになってじっと観察している。「宙吊り」は発想の転換を促す。自分のセンスのほうが優れていると思っているI君には耳が痛いことかもしれないが、自分の立場からではなく、上司の立場からなぜ自分のデザインでは駄目なのかを考えてみてはどうか。冷静になると見えてくることがいろいろあるに違いない。また、丸ごと自分のデザインを採用してもらおうなどと考えず、会社の方針の中で自分のセンスの活かしどころを工夫するのも一案だ。
(5)
「太陽」Rの対策カードは「神の家」となった。「神の家」はI君の勤務している会社である。会社の一員としてこの問題を考えなさいとのメッセージが読み取れる。会社があってこそ、I君はデザインの仕事ができる。また、デザインした商品は売れなければ、会社は存続できない。会社に貢献できてこそ、次の道が開かれるというものだ。
デザイナーとして一人前になっていくには、実績を積み上げて行かなければならない。どちらかというとアイデア先行型で、修練するとか地道にコツコツ自分の腕を磨き上げるのは苦手なI君。改めて自分の課題を認識する機会となった。
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