Q.派遣で事務職についているOさん。近年、派遣で働く人たちの雇用環境は厳しくなっているが、Oさんのところはとりわけ厳しい一ヶ月更新だ。それだけでも緊張を強いられるが、Oさんはたくましく乗り切っている。そんなOさんに上司から職場の異動の打診があった。仕事の内容は同じだが、今勤めている千代田区の店舗から、一ヶ月だけ港区にある本社に行って手伝ってほしいとのことだった。自分の視野も広がるいい機会だと思い、「はい、行かせていただきます。」と返事をした。いったんは了承したものの、新しい環境でやっていけるのかだんだん不安になる。それに、新勤務地になると自宅から遠くなるので、朝も早く起きなければならない。本当に大丈夫かなあ・・・と思い始めると、「今なら断ることもできる」という心の中からのささやきになびきそうになる。この話を引き受けてよいだろうか。(M・Oさん 30代 埼玉)
A.
(1)
現状 |
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希望にあふれ目的地に一歩踏み出そうとする「愚者」は、上司から打診された時のOさんの状況を見事にあらわしている。そう、最初に上司から話を受けてOさんの脳裏に浮かんだのは、「新しい環境で働くと心機一転できる。異動は自分を磨く絶好のチャンス!」という思いだった。間際の打診は、上司の信頼と評価のあらわれでもある。だから、複数の派遣社員がいる中、自分に声がかかったこともうれしかった。期待に胸を膨らませて「行かせていただきます。」と言ったOさんの姿がここにある。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯の「皇帝」はOさんの上司である。Oさんは上司をとても尊敬している。職場全体に目が行き届き、社員を取りまとめるのがうまい。指導力があり部下の信頼が篤いので、厳しい雇用環境なのにOさんも頑張ることができた。その上司が、この度の最適任者はOさんだと判断したのだ。「皇帝」が正立で出ているので、上司の決断は正しい。
(3)
展望は「宙吊り」Rである。「異動は絶好のチャンス!」などとルンルン気分でいたのに、考え始めると、「早起きはつらいなあ・・・、新しい環境になじめなかったらどうしよう・・・。」などと不安材料ばかりが浮かび、自分をがんじがらめにしてしまう。自縄自縛とはこのことだが、逆向きで出たカードは、まさにこのことが問題であると言っている。
(4)
「皇帝」の注目カードは「運命の輪」。Oさんに異動の打診があった部署では、前任者と新入社員の引き継ぎがずれてしまい、ちょうど一カ月だけ空白ができてしまう。空白ができると会社全体の業務にも支障が生じる。上司がOさんを抜擢しようと思ったのは、ベテランのOさんなら業務をうまくつないでくれると確信してのことだった。「運命の輪」を回る3匹の動物は、まるでバトンを次の人に渡すリレーをしているようだ。正立で出ているので、Oさんなら業務の引き継ぎをスムーズにできることが分かる。
(5)
「宙吊り」Rの対策カードは、「XIII」になった。不安で自分を縛り、異動を断ろうかとも考えるOさんに、タロットはその縄を断ち切り、思い切って新しい環境に飛び込みなさいと助言する。かなりの思い切りを必要とするが、踏み出すことでどんなに素晴らしい世界が開けるかは、次の注目カードが示唆している。
(6)
「XIII」の注目カードは「審判」である。早起きや長くなる通勤時間をものともせず異動するOさんに、天使は祝福のラッパを吹く。激励のラッパでもある。狭いところから抜け出した真ん中の人物のように、Oさんも新たな職場で見聞を広め、人間的にも一回り大きく成長するであろう。
やはり最初の返事通りでよかったのだ。納得の展開となり、迷いが吹っ切れた。
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