Q.Nさんは、ファッションデザイナーである。ファッション業界は、90年代、某社の登場で、流通のあり方から衣料に対する考え方まですべてが大きく変わった。既存の会社はどこも変化への対応に追われ、Nさんの会社も例外ではなかった。デザイナーとしての使命感と企業の利潤への貢献のはざまで、Nさんはずいぶん悩みながら頑張ってきた。先輩として、壁にぶつかる若手社員の相談にもよく乗り、苦しいところを凌いできた。しかし、猛スピードで変貌するファッション業界を前に、人生をリセットする必要性を感じ、最近、22年間勤め上げた会社人生に一区切りつけた。今後のあり方をタロットで見ることにした。(M・Nさん 50代 東京)
A.
(1)
現状 |
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ファッションデザイナーとしての仕事は、Nさんが自分の才能を発揮できるぴったりの職業だった。途中で業界が激変し、ファッションに対する考え方で葛藤したこともある、苦境に陥ったこともある。Nさんにとってはまさしく戦いの日々だった。しかし、そうした苦闘の日々も、今は懐かしくもある。勝利者である「戦車」からは、22年間打ち込み、ひとつのことをやり遂げた達成感があふれている。多くの戦いに挑み、戦い抜いてきたからこそ、自分の過去を充実した思いで振り返ることができるのであろう。
(2)
経緯 |
現状 |
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ファッション業界のあり方が激変する中で、衣類は「安かろう悪かろう」から「安くても高品質」に変わってきた。それに伴って、Nさんの会社でもコスト削減、合理化を厳しく進めた。衣類は実用性さえあればなんでもいいわけではない。美的センスも重要な要素である。しかし、コスト削減と美的センスの表現との両立は本当に難しい。「節制」が正立なので、Nさんはこの難問をうまくやりくりしてきたことがわかる。また、Nさんはベテラン社員として厳しい業界で悪戦苦闘する後輩の面倒をよく見てきたが、カードは、職場における救済役のNさんの姿もあらわしている。
(3)
展望は「愚者」。新たな旅に出ようとする人の姿である。Nさんはファッションデザイナーという仕事を天職であると思ってきたが、企業に所属していると、当然のことながらその企業の方針に基づいてデザインしなければならない。コストの制約もある。しばしばそのことで葛藤してきたNさんは、いずれフリーな立場で自分が納得できる仕事をやってみたいと思っていたのだ。「愚者」は、そんなNさんの気持ちを後押ししている。
(4)
「節制」の注目カードは「悪魔」が出た。お客さんが「あの服、かわいい!」「あれ素敵ね、私に似合いそうだわ!」と魅了されているのは、Nさんがデザインした服だろうか。コスト削減の厳しい中、顧客の満足が得られる服をデザインし、会社の売り上げに貢献してきたことがわかる。職場で「節制」の役を果たしてきたNさんが、皆の志気を鼓舞して社員の団結にも一役買って来たことは、「悪魔」カードから容易に想像できる。
(5)
「愚者」の注目カードは「宙吊り」である。じっくり今後のことを練る姿だ。自分の内面を見つめ、自分の夢や抱負を温め、まず自分の心の中で熟成させること。ファッションデザイナーとしての過去の成功体験もあるだろうが、それはそれ。逆立ちすると世界がまったく違って見えるように、まったく違う発想で考えることが大切だ。
Nさんは会社を辞めてから、興味のあったタロットの勉強も始めたところである。タロットの勉強は、以前の自分になかった発想、気づきをもたらしてくれる。「宙吊り」になるのに大いに役立つだろう。
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