Q.Yさんの娘さんは現在25歳である。3年前に自ら希望した大手アパレルに総合職として就職し、バリバリ仕事をこなしてきた。就職先を見つけることが難しい時代にあって、好きな仕事に就けたことの幸いを家族はみんな喜んでいた。ところが最近、突然、「会社を辞めてデザイナーの専門学校に行きたい。学費は自分で出すから。」と、母親であるYさんに切り出した。祖母は孫の考えることが理解できず、父親はまだ娘の決意を何も知らない。Yさんも最初は驚いたが、娘の性格からすれば本気であることがわかる。そこで、「分かったわ。できるだけ応援するからね。」と応じた。新しい世界に挑戦しようとする娘に親としてどう接するのがよいか、タロットに聞くことにした。(E・Yさん 40代 神奈川)
A.
(1)
現状 |
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新たな夢に向かって一歩踏み出そうとしている娘さんである。近年のアパレル業界の就職事情は厳しい。せっかくの会社を辞めてしまうと、次に就職先を見つけるのは、大学卒業時以上に大変だ。それが分かっていて、学費を自分で工面してまで専門学校に行くと決めた本人はよほどの覚悟があってのことだろう。Yさんは正立で出た「愚者」を見て、娘さんの挑戦が一時的な出来心でないことを確信する。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯は「月」Rである。自分の希望通りの人生を生き、順風満帆であると周囲の者は思い込んでいたが、本人の心の中は悶々としていたことがわかる。会社訪問をし、自分なりに描いていた仕事像と現実のギャップが大きかったのかもしれない。また、現場の仕事をこなすうちに、自分の夢が変わっていったのかもしれない。いずれにしても、先が見えない中で会社にとどまり続けることは、ますます暗闇の方へ進んでいくように感じていたのだろう。決して弱音を吐かなかったが、実は「このままではまずい、何とかしなければ!」と、密かに苦しんでいたのだ。
(3)
展望は「審判」Rが出た。本人が行く予定をしている専門学校は、服飾では名門であり、今まで多くの有名デザイナーを輩出している。アパレル業界でも定評がある。その分、授業は非常に厳しく、途中脱落者も多い。本人は思うところがあって、「デザイナーになる!」と宣言して入学するものの、入学すれば授業についていくのも大変で、すぐに「これこそが私の天職、やはり間違っていなかった。」と断言できるには至らなそうだ。天使の呼びかけに気づき呼応する、つまり自分の天職に目覚める「審判」が逆向きで出ているから、困難が伴うことが予想される。デザイナーになることが思っていたほど簡単ではないことも思い知らされるだろう。
(4)
経緯の対策カードは「隠者」。「隠者」は灯りを掲げ、暗闇の中で進むべき道を照らす。母親であるYさんの出番だ。娘さんから最初に相談されたのもYさんだ。希望通りの就職をしておきながら、辞めたいといった相談は、身近な者にもしにくいものであるが、母親なら理解してくれると思っての相談だったに違いない。Yさんは良き相談役に徹することだ。Yさんがしっかり娘さんを受け止め、娘さんが光を見て進めるようにしてあげるとよい。
(5)
「隠者」の注目カードは「13」、新しく出直そうとしている娘さんである。悶々としたまま続けることをよしとせず、思い切ってリセットしようとする娘さんの決意は、一時的に身も細る辛い状況を作り出すかもしれないが、背骨の麦の穂が示唆するように、豊かな実りをもたらしてくれるであろう。そのためにも、Yさんは娘さんの変容を見守り、導く「隠者」のような存在でいる必要がある。
(6)
「審判」Rの対策カードは「世界」である。「世界」の中央に立つ人物は、広い視野に立って世界を見渡し、楽しそうに踊っている。専門学校に入ってからも、なかなか迷路から抜け出せず、苦労が予想される娘さんに、人生も仕事も自分らしく生き生きと喜びを感じられることが大切であると気づかせてあげることも、Yさんの役割であろう。
(7)
「世界」の注目カードは「仕事師」となった。仕事をする娘さんである。やればやるほど楽しく、やる気が出てくる仕事をすることが、娘さんの願うところだ。娘さんはまだ25歳。これからの人生のほうがずっと長い。「仕事師」が「隠者」をちらりと見つめている。娘さんは母親のYさんを頼りにしているようだ。Yさんは、人生の先輩として悠然とし、人生をよりよく生きるための智慧で、娘さんを支える存在になることができる。
子供のことになると、母親はつい感情的に反応しがちだが、タロットを展開することで、Yさんは冷静になれた。娘さんの挑戦を賢者のようにサポートしていくつもりでいる。
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