Q.Iさんはもともと在家で、ごく普通のサラリーマンであった。考えるところがあって、転職を決意し、あるお寺の職員になった。将来は、住職として寺を守り、人々の悩みや苦しみの良き相談者になりたいと思っている。このお寺に、最近、2人の若者が職員として入ってきた。2人はお寺出身で、一人前の住職になる研修を兼ねてこの寺にやってきたのだ。Iさんは2人の後輩に仕事を覚えてもらうため、できるだけ本人たちに仕事を割り振り任せるようにしている。今のところうまくいっているが、後輩たちとの付き合い方はこのままで本当にいいのだろうか?と思うこともあり、タロットに尋ねることにした。(M・Iさん 30代 千葉)
A.
(1)
現状 |
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現状は「恋人」が正立で出た。Iさんと2人の後輩が話し合っている姿から、3人の人間関係は良好であることが分かる。Iさんによれば、仕事の時は2人にどんどん任せる先輩・後輩の関係であるが、休憩になると先輩・後輩というより、テレビの番組の話などで盛り上がる仲良し3人組になってしまうそうだ。親しい関係が出来上がっているせいか、後輩も、冗談交じりに「先輩も少しはやってくださいよ。」と漏らす間柄だ。カードは正立なので問題はないが、Iさんには天上から弓矢を射る天使が気になる。後輩と一緒になってはしゃいでいる様子を、天から見られているように感じてしまうのだ。仏様の視線を意識すると、少し恥ずかしくなる。
(2)
経緯 |
現状 |
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経緯は「運命の輪」で、ここにも3人が出ている。輪の上にゆったり座るスフィンクスは、後輩にてきぱき指示を出すIさんである。指示を受けた2人の後輩は、こまねずみのように忙しく働いている。早く後輩が一人前になるには、できるだけ仕事を任せたほうがいいとの考えから、Iさんは指示だけして、後輩自身が自分で努力するように仕向けている。カードは正立なので、Iさんのこうした接し方が、後輩の成長にとてもよかったことがわかる。
(3)
展望は「悪魔」Rとなった。良好だった3人の関係は崩れ、問題発生の暗示である。Iさんは仕事を後輩に任せ、口出ししないようにしているが、後輩からすれば、先輩は何でも自分たちに押し付けると受け取ってしまうのかもしれない。カードが正立であれば、Iさんは後輩たちから慕われながら、尊敬される存在であり続けるが、逆向きなので、後輩の心の掌握が難しくなりそうだ。Iさんは、欲望むき出しの「悪魔」Rのカードが、心にグサリと突き刺さると言う。休憩時間に俗っぽい話で一緒にはしゃぐ姿が浮かび上がり、「悪魔」Rにそのことを指摘されているようで、心が咎めるのだ。休憩時間に上下関係を忘れて笑い転げていることが、今は親密さのあらわれになっているが、過剰になればやがてIさんの統率力を蝕み、言うことを聞かない後輩を作り出しかねない。Iさんは、思い当たる節があるので、カードのメッセージに感服する。。
(4)
「悪魔」Rの対策カードは「宙吊り」である。「宙吊り」は逆さになって瞑想している。一度立ち止まって、後輩への接し方を見直すことが必要だと分かる。「悪魔」が現世の欲をむき出しにしているのに対し、「宙吊り」は一人になって瞑想している。3人とも聖職者の道を歩んでいるのであるから、休憩時間であっても、先輩としての振る舞い方は大切であることに気づく。「悪魔」Rと「宙吊り」は、ロープと手を後ろに隠していることで親縁している。Iさんはこれまでと同じように、仕事をどんどん後輩に任せ、手は出さない方針を貫くとよいだろう。しかし、放任主義ではなく、先輩・後輩の関係を保つ努力は必要だ。
4枚のカードは、いずれもIさんに深く訴えかけるものがあった。特に、展望に出た2枚のカードは、Iさんに自分が選んだ聖職の原点を振り返るきっかけを与えることになり、メッセージとともにIさんの心に刻まれた。
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