Q.Sさんは高齢のお母さんをずっと自宅で介護してきたが、骨折がもとで現在は入院している。90歳を過ぎたお母さんは、体は弱ってきたものの、口は達者で、娘であるSさんに甘えから、言いたい放題である。お母さんのわがままに手を焼きながら、Sさんは、毎日、病院まで足を運び、お母さんを見舞っている。ある時、貴重品を部屋に置いたまま、お母さんを病院の屋上に連れて行ったことがあった。いつも通り見舞いを終え、家に帰る途中、財布を見てびっくり、あるはずのクレジットカードが一枚だけなかったのだ。お金にはいっさい手をつけず、カードは数枚入っていたにもかかわらず、一枚だけない。家に戻ってすぐカード紛失の手続きをしたところ、幸いにもクレジットカードの実害はなかった。どうしてこうなったのだろう?思い当たる節もあるが、Sさんは心の整理をするためにタロットでみることにした。(M・Sさん 60代 神奈川)
A.
(1)
現状 |
|
現状は「隠者」Rで、老人がおぼつかない足取りでふらふらしている。カードを見て、Sさんはすぐある人物を思い浮かべた。お母さんと同じ病院に入院している認知症のおばあさんである。病室には鍵がかかっていないので、他の人の病室を徘徊し、お母さんの病室にもよく来ると、お母さんから聞いていた。貴重品を置いたまま、屋上にお母さんを連れて行っている間に、いつものようにふらりと病室に来たのかもしれない。
(2)
経緯 |
現状 |
|
|
経緯は「正義」Rが出た。逆向きなので、正しく判断できない人をあらわすが、ここでも認知症のおばあさんを強く示唆している。認知症であれば、やっていいことといけないことの区別はつかない。お金には手をつけず、何枚かあるカードの一枚だけ抜き取ったことから、どうやら金品を盗む目的ではなかったようだ。自分のやっていることの自覚もないまま、カードのきれいなデザインに魅かれてつい手が出たのかもしれない。
(3)
Sさんには、クレジットカード紛失の事態が明らかになってきた。展望の「戦車」は、病院で起きてしまった出来事を胸に収めた上で、自分の人生を勝利者のように突き進むSさんの姿である。クレジットカードの実害はなかったので、新しく作り換える面倒があるだけである。これすらも「戦車」のような度量で考えれば、小さなことである。Sさんは、何のダメージも引きずることなく、我が道を進んで行けばよい。教訓として、今後はつまらないトラブルを避けるために、病院内でも部屋を空けるときは貴重品を携帯するようにしようと思った。
(4)
「隠者」Rの対策カードは「星」となった。清めの泉ですべてを洗い清める姿である。Sさんは、寛容な心でこの度のことを水に流そうと思えた。高齢で人生の最終章を生きる人には、詮索したり、咎めたり、目くじらを立てたりするより、愛情を思い切り注いであげた方がいい。脳の機能が十分働かなくても、思いやりや慈しみは喜びとなるものである。
(5)
「星」の注目カード兼「正義」Rの対策カードは、「女帝」が出た。「女帝」の目は物事の本質を見る目である。通常の現実的な出来事の表面を見る目ではない。タロットは、認知症のおばあさんに対して、「女帝」のように最も大切なことに着目した上で、対処したほうがいいと言う。しかも、「女帝」は未来志向である。起きてしまったことを徹底して究明し、犯人を捜し出すことよりは、イデア発見のために生きることをSさんに勧める。お母さんの世話で忙しいSさんも、少しでも時間があれば勉強に使いたいと思っている。この度のタロットの展開で心の整理はついたSさん。ここで一区切りつけて、自分の学びに専念することにした。
前のケーススタディへ